スクラップ・ブック <あなたの安心>第1部 出産・子育て(2)

出産一時金 分娩施設が直接受け取る

出産した人には加入する健康保険から出産育児一時金が支払われます。金額は1児に付き42万円。産科医療補償制度(次回に説明します)に加入していない分(ぶん)娩(べん)施設で出産した場合などでは39万円です。

正常なお産は病気ではないため、健康保険は使えません。出産費用は入院費なども含めて全額が自費になりますので、一時金はその費用に充ててもらうのが目的です。

その一時金の支払い方法はかつてとは変わりました。従来は出産した人が費用をいったん支払った後に健康保険に請求して受け取っていましたが、現在は分娩施設が直接、健康保険から受け取る仕組みです。

その方法には、分娩施設側が請求から受け取りまでの手続きを全部やってくれる「直接支払制度」と、請求は自分がしますが受け取りは分娩施設に委任する「受取代理制度」があります。

主流は直接支払制度です。ところが、この方法だと施設側の事務負担が大きい上、入金は出産1~2カ月後になるため、小規模なところでは資金繰りに窮するところも。このため、そういう施設には事務負担も少なく、より早く入金される受取代理制度も整備されました。

この二つの制度で、出産する人は多額の費用を用意しなくてもよくなりました。ただし、海外で出産した場合や分娩施設への直接支払いを希望しない場合は従来通りの方法でも可能です。

20130530出産一時金 ただ、お産には「定価」がないため、費用は地域や施設で異なります。厚生労働省の調査では全国平均は約47万3千円ですので、一時金だけでは賄えない計算になります(図参照)。

実際の費用が一時金を上回る場合は差額を自費で退院時に払います。逆に下回ったときは差額を健康保険から受け取れます。出産費用の補助や祝い金など独自の支援制度を設けている会社や市町村もありますので、確認してください。
(神戸新聞 2013/05/30 木曜日 朝刊)