<シニアの備え>第9部「終活」(3)

エンディングノート 自分の思いを書き残す

認知症などで判断能力が衰えたときは、延命治療や葬儀は…。人生も晩年に近づくといろいろなことが気になってきます。そういう話はかつては「縁起でもない」と遠ざけられがちでしたが、核家族化や価値観の変化などで自分の思いを書き残す人も増えています。

その一つの手段が「エンディングノート」です。遺言書とは違って法的な拘束力はありませんが、残された家族に迷惑をかけないためにも、少しずつ整理しながら、これまで歩んできた道を振り返ってみたらどうでしょうか。

書店などで市販されているほか、金融機関や自治体などで配布しているところもあります。10ページ前後から数十ページに及ぶものまでさまざまですが、内容は大きく「もしものとき」と「人生をつづる」といった項目に分かれているものが多いようです(図参照)。もちろん一般のノートでもかまいません。

「もしものとき」は介護や死に臨んだとき、死後のことについて書きます。がんの告知や終末期医療への対応、葬儀や墓などの希望です。交友関係は子どもらには疎い面もあるので、死を知らせてほしい人の連絡先も。

預貯金や不動産など財産関係の書類の保管場所も重要です。ただ、後でトラブルになるのを避けるため、誰にいくら渡すなど具体的なことは書かないほうがいいようです。そういう必要があれば遺言書にしましょう。

「人生をつづる」では、家系や仕事、結婚、子どもの成長などの思い出、配偶者や子ども、孫ら大切な人へのメッセージなどを自由に書きます。

書きやすいところから始め、考えが変わったらいつでも書き直しましょう。大事なのは、万一のときに役立ててもらうためですから、置いてある場所などを家族に知らせておくことです。できれば家族と話し合いながら内容を共有したいものです。これからの生き方を見直すきっかけにもなることでしょう。
神戸新聞(2019/06/07 金曜日 朝刊)