<シニアの備え>第8部「相続と贈与」(4)

自筆証書遺言 「全て手書き」の負担軽減

自分の財産を誰にどのくらい相続させるか。その意思を書き残すのが遺言です。主に▽自筆で書く「自筆証書遺言」▽口述した内容を公証人に作成してもらう「公正証書遺言」―がありますが、このうち自筆証書遺言については今年1月13日から要件が緩和され、書きやすくなりました。

自筆証書遺言は何度でも書き直せますし、費用もかからないというメリットがありますが、これまでは偽造防止のため本文と財産目録の全てを手書きしなければなりませんでした。高齢者にはかなりの負担になり、活用されているとはいえない状況です。

このため、遺言書のうち目録に示す不動産や預貯金口座などの詳細は、パソコンなどで作成したもの、あるいは不動産の登記事項証明書や預貯金通帳などのコピーでも認められるようになりました。ただし、全てのページに署名と押印が必要です(図参照)。

ただ、自筆証書遺言は手軽に書ける半面、保管中に紛失したり、改ざんされたりする恐れもあります。不備があって無効になる場合や、遺族に見つけてもらえないなどの場合も。さらには遺言書があったことを家庭裁判所で確認してもらう「検認」を受けなければなりません。

そうしたことへの対応として、2020年7月10日からは法務局(遺言書保管所)で保管する制度も始まります。書き直した場合は何度でも保管を申請でき、一番新しい日付のものが有効になります。申請のときに署名や押印なども確認されるので、家庭裁判所での検認も不要になります。

相続の争いは財産の多い少ないに関係なく起こるといわれます。遺言があれば、例えば介護に尽力してくれた子どもの配偶者ら法定相続人ではない人にも財産を分配できます。「争族」といった泥沼化をある程度は避けられますので、ぜひとも書き残しておきたいものです。
神戸新聞(2019/05/17 金曜日 朝刊)

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