<シニアの備え>第8部「相続と贈与」(3)

介護などの貢献 相続人以外でも請求できる

現在は、例えば長男の妻は長男が亡くなった後も同居する義父の介護に尽くしても、遺言がなければ義父が亡くなったときの遺産を相続できません。子どもの配偶者は法定相続人ではないからです。その一方で、法定相続人である次男や長女は何もしなくても遺産を取得できます。

同居する義父母の介護を担っている子どもの配偶者は、厚生労働省の調査では全体の約1割います。別居している子どもの配偶者も含めるとさらに増えるとみられ、現状はあまりに不公平ではないかという不満が高まっています。

このため、2019年7月からは、遺産分割を相続人だけで行うのは変わりませんが、相続人以外の親族でも介護などで貢献した場合は相続人に金銭(特別寄与料)を請求できるようになります(図参照)。

請求できるのは親族なので、亡くなった人の子どもの配偶者はもちろん、おいやめいも含まれます。法律婚が前提のため、事実婚の妻やその連れ子は対象になりません。

特別寄与料を支払うかどうかやその額は当事者間の話し合いで決めますが、折り合えない場合は家庭裁判所が決めます。ただ、家裁への請求は原則6カ月以内などの制限があるので注意も必要です。

認められる貢献の内容は、無償の労務提供をして亡くなった人の財産の維持・増加に「特別の寄与」をした場合とされています。

特別の寄与というのは、例えば「介護のために仕事をやめた」「ヘルパーを雇わなくてもいいように自分が資格を取った」などの場合とみられ、単に「介護に他の兄弟は協力しなかった」などだけではなかなか難しいとみられています。

このため、実際に貢献が認められるかは相当ハードルが高いと思われますが、今は全く相続の蚊帳の外に置かれているだけに大きく前進したとはいえるのではないでしょうか。
神戸新聞(2019/05/10 金曜日 朝刊)

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