相続預貯金の仮払い制度 単独で一部引き出し可能に
私たちの生活と密接に関係している民法が大幅に改正され、相続制度も約40年ぶりに見直されました。高齢化が進んで社会や家族のあり方が大きく変化したことへの対応です。今回からはその中の主なものをみていきます。最初は相続預貯金の仮払い制度です。
亡くなった人の預貯金は凍結されますので、残された遺族は葬儀費用の支払いや当面の生活費に困ることも多いのが現状です。遺産分割が決まるまで引き出せませんので、時間がかかることもあります。
このため、2019年7月からは、一定額なら仮払いとして相続人が単独で引き出せるようになります(図参照)。一定額とは、金融機関ごとに「預貯金の3分の1×仮払いを求める相続人の法定相続分」です。
法定相続分は財産を相続できる割合のことで、相続人が配偶者と子どもなら配偶者は2分の1、子ども全員で2分の1(複数いる場合は均等割)―などと決まっています。
例えば、ある金融機関の預貯金が600万円で相続人が配偶者と子ども2人とすると、配偶者は単独で「600万円×3分の1×2分の1」の100万円を引き出せます。子どもなら「600万円×3分の1×4分の1」の50万円です。
預貯金が多額であれば引き出し可能額も増えますが、金融機関ごとに150万円の上限が設けられました。
金融機関では仮払いを求める人の法定相続分を確認しなければならないので、亡くなった人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本などの書類を求められるとみられています。それには法定相続情報証明制度の利用が便利です。
亡くなった人の戸籍謄本などで法務局に申し出て認証文付き法定相続情報一覧図(写し)の交付を受けます。無料で必要な通数が交付されるので、複数の金融機関での引き出しが簡便になるほか、不動産の登記などさまざまな相続手続きにも使えます。(共同)
神戸新聞(2019/04/26 金曜日 朝刊)